仏性 (8)

(ぶっしょう)

 五祖 大満禅師(ダイマン ゼンジ)は、蘄州黄梅(キシュウ オウバイ)の人なり。父無くして生まれ、童児にして道(ドウ)を得たり。乃ち栽松道者(サイショウ ドウシャ)なり。

五祖 大満禅師は蘄州黄梅県の人である。父が無くて生まれ、童子でありながら仏道を得ていた。この人が栽松道者と呼ばれる人である。

初め蘄州(キシュウ)の西山に在りて松を栽えしに、四祖の出遊(シュツユウ)に遇(ア)ふ。

当初、蘄州の西山で松を植えていると、四祖大医禅師の遊行に出会った。

道者に告ぐ、「吾れ汝に伝法(デンポウ)せんと欲(オモ)ふに、汝 已(スデ)に年 邁(ス)ぎたり。若(モ)し汝 再来(サイライ)せば、吾れ尚(ナホ)汝を遅(マ)つべし。」

四祖はその道者に告げた。
「私はお前に法を伝えようと思うのだが、お前は既に老年である。もしお前が生まれ変わって来るなら、私はそれまでお前を待ちたい。」と。

師 諾(ダク)す。遂に周氏家(シュウシカ)の女(ムスメ)に往きて托生(タクショウ)す。
(チナ)みに濁港(ジョクコウ)の中にすつ。神物護持(ジンモツ ゴジ)して、七日損ぜず。
因みに収
(ト)りて養へり。七歳に至るまで童子たり。

師は承諾し、そして周氏という家の娘の所に出かけ、その胎に宿って生まれた。
それで娘は濁った港に捨てたが、神仙が護持して七日間その身は損なわれなかった。
そこで娘は赤子を引き取って養育した。師は七歳になるまで寺院で僧行を習う童子であった。

黄梅路上に於て、四祖 大医禅師(ダイイ ゼンジ)に逢ふ。
祖、師を見るに、是れ小児なりと雖
(イエド)も骨相奇秀(コッソウ キシュウ)、常の童に異なる。

そして、黄梅の路上で四祖大医禅師に会った。
四祖は師を見て、子供ながらめずらしく秀でた骨相であり、普通の童子ではないことを知った。

祖見て問うて曰く、「汝 何(イカ)なる姓(ショウ)ぞ。」
師答へて曰く、「姓は即ち有り、是れ常の姓にあらず。」
祖曰く、「是れ何
(イカ)なる姓ぞ。」
師答へて曰く、「是れ仏性。」
祖曰く、「汝に仏性無し。」
師答へて曰く、「仏性空なる故に、所以
(ユヘ)に無と言ふ。」 

そこで四祖は尋ねた、「お前は何という姓か。」
師は答えて、「姓はありますが普通の姓ではありません。」
四祖が言うには、「それは何という姓か。」
師は答えて、「仏性といいます。」
四祖が言うには、「お前に仏性は無い。」
師は答えて、「仏性は空であるから、仏性は無いというのでしょう。」と。

祖、其(ソ)の法器なるを識(シ)りて、侍者(ジシャ)たらしむ。後に正法眼蔵を付す。
黄梅の東山に居して、大いに玄風
(ゲンプウ)を振(フル)ふ。

四祖は、その童子が法の器であることを知って、侍者として仕えさせた。そして後に正法眼蔵(仏法の真髄)を付与した。
その後、五祖は黄梅の東山に住して大いに宗風を振るった。

仏性 以降未完成。

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