受戒(5)

善男子、汝 既に三聚清浄戒(サンジュ ショウジョウカイ)を受けたり。応(マサ)に十戒を受くべし。是れ乃ち諸仏菩薩清浄の大戒なり。

今、入信の善男子は、既に三か条の清浄戒を受け終わりました。次には十戒を受けなさい。この戒は諸仏菩薩の清浄な大戒です。

第一、不殺生(フセッショウ)。 汝 今身(コンジン)(ヨ)り仏身に至るまで、此の戒 能(ヨ)く持(タモ)つや否や。 答て云く、能く持つ。(三問三答)

第一不殺生、生あるものを殺してはならない。あなたは今から仏になるまで、この戒をよく保つことができますか。
(答えて言う)よく保ちます。(三回尋ね、三回答える)

第二、不偸盗(フチュウトウ)。 汝 今身従り仏身に至るまで、此の戒能く持つや否や。答て云く、能く持つ。(三問三答)

第二不偸盗、盗んではならない。あなたは今から仏になるまで、この戒をよく保つことができますか。
(答えて言う)よく保ちます。(三回尋ね、三回答える)

第三、不貪婬(フトンイン)。 汝 今身従り仏身に至るまで、此の戒 能く持つや否や。 答て云く、能く持つ。(三問三答)

第三不貪婬、淫欲を貪ってはならない。あなたは今から仏になるまで、この戒をよく保つことができますか。
(答えて言う)よく保ちます。(三回尋ね、三回答える)

第四、不妄語(フモウゴ)。 汝 今身従り仏身に至るまで、此の戒 能く持つや否や。 答て云く、能く持つ。(三問三答)

第四不妄語、うそを言ってはならない。あなたは今から仏になるまで、この戒をよく保つことができますか。
(答えて言う)よく保ちます。(三回尋ね、三回答える)

第五、不酤酒(フコシュ)。 汝 今身従り仏身に至るまで、此の戒 能く持つや否や。 答て云く、能く持つ。(三問三答)

第五不酤酒、酒を売ってはならない。あなたは今から仏になるまで、この戒をよく保つことができますか。
(答えて言う)よく保ちます。(三回尋ね、三回答える)

第六、不説在家出家菩薩罪過(フセツ ザイケ シュッケボサツ ザイカ)。 汝 今身従り仏身に至るまで、此の戒 能く持つや否や。 答て云く、能く持つ。(三問三答)

第六不説在家出家菩薩罪過、他の罪 過ちを説いてはならない。あなたは今から仏になるまで、この戒をよく保つことができますか。
(答えて言う)よく保ちます。(三回尋ね、三回答える)

第七、不自讃毀他(フジサン キタ)。 汝 今身従り仏身に至るまで、此の戒 能く持つや否や。 答て云く、能く持つ。(三問三答)

第七不自讃毀他、自分をほめ他をそしってはならない。あなたは今から仏になるまで、この戒をよく保つことができますか。
(答えて言う)よく保ちます。(三回尋ね、三回答える)

第八、不慳法財(フケン ホウザイ)。 汝 今身従り仏身に至るまで、此の戒 能く持つや否や。 答て云く、能く持つ。(三問三答)

第八不慳法財、世財 法財を施すことを惜しんではならない。あなたは今から仏になるまで、この戒をよく保つことができますか。
(答えて言う)よく保ちます。(三回尋ね、三回答える)

第九、不瞋恚(フシンイ)。 汝 今身従り仏身に至るまで、此の戒 能く持つや否や。 答て云く、能く持つ。(三問三答)

第九不瞋恚、怒ってはならない。あなたは今から仏になるまで、この戒をよく保つことができますか。
(答えて言う)よく保ちます。(三回尋ね、三回答える)

第十、不謗三宝(フボウ サンボウ)。 汝 今身従り仏身に至るまで、此の戒 能く持つや否や。 答て云く、能く持つ。(三問三答)

第十不謗三宝、三宝(仏と法と僧)を誹謗してはならない。あなたは今から仏になるまで、この戒をよく保つことができますか。
(答えて言う)よく保ちます。(三回尋ね、三回答える)

上来十戒、一一犯すことを得ざれ。汝 今身従り仏身に至るまで、此の戒 能く持つや否や。 答て云く、能く持つ。(三問三答)
是の事、是の如く持つべし。(受者礼三拝)

この十戒は、どれも犯してはなりません。あなたは今から仏になるまで、この戒をよく保つことができますか。
(答えて言う)よく保ちます。(三回尋ね、三回答える)
これらの事を答えたように保ちなさい。(戒を受ける者は三拝する)

上来三帰、三聚浄戒、十重禁戒、是れ諸仏の受持したまふ所なり。汝 今身従り仏身に至るまで、此の十六支戒、能く持つや否や。 答て云く、能く持つ。(三問三答)
是の事、是の如く持つべし。(受者礼三拝)

この三宝の帰依、三か条の清浄戒、十か条の禁戒は、諸仏が護持しているものです。あなたは今から仏になるまで、この十六か条の戒をよく保つことができますか。
(答えて言う)よく保ちます。(三回尋ね、三回答える)
これらの事を答えたように保ちなさい。(戒を受ける者は三拝する)

次に処世界梵(ショセカイボン)を作(ナ)し訖(オワッ)て云く。帰依仏、帰依法、帰依僧。 (次に受者 道場を出づ)

次に処世界梵を唱え終わって言う。仏に帰依す、法に帰依す。僧に帰依す。 (次に戒を受けた者は道場を出る)

この受戒の儀、かならず仏祖正伝せり。丹霞天然(タンカ テンネン) 薬山高沙弥(ヤクサン コウシャミ)等、おなじく受持しきたれり。比丘戒(ビクカイ)を受けざる祖師あれども、この仏祖正伝菩薩戒うけざる祖師、いまだあらず。かならず受持するなり。

この受戒の作法は、必ず仏祖が正しく相伝して来たものです。丹霞天然和尚や薬山高沙弥和尚なども同じく受けて護持してきました。出家の具足戒を受けていない祖師はいましたが、この仏祖の正しく相伝した菩薩戒を受けていない祖師はおられません。祖師であれば必ず受けて護持しているのです。

正法眼蔵 受戒 第二

受戒おわり。

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