袈裟功徳(6)

袈裟(ケサ)は言(イワ)く三衣有り。五条衣(ゴジョウエ)、七条衣(シチジョウエ)、九条衣(クジョウエ)等の大衣(ダイエ)なり。

袈裟には三種の衣(袈裟)がある。つまり五条衣、七条衣、九条衣などの大衣である。

上行(ジョウギョウ)の流(トモガラ)は、唯(タダ)(コ)の三衣を受けて余衣(ヨエ)を畜(タクワ)へず。唯 三衣を用いて、身に供(クウ)じて事足(ジソク)す。

優れた出家者の門流では、ただこの三衣だけを受けて他の衣は持たない。ただ三衣だけを身に着けて事足りるのである。

(モ)し経営 作務(サム)、大小の行来(ギョウライ)には五条衣を著(ヂャク)す。諸の善事を為し、入衆(ニュッシュ)するには七条衣を著す。人天(ニンデン)を教化(キョウケ)し、其(ソレ)をして敬信(キョウシン)せしむるには、須(スベカ)らく九条等の大衣を著すべし。

もし、人の世話や掃除などの仕事、大小便の行き来には五条衣を着る。僧としてさまざまな善き行事を為す時、衆僧と共に修行する時には七条衣を着る。人々を教化して、仏法を敬い信じさせる時には、必ず九条衣などの大衣を着るようにしなさい。

又 屏処(ヘイショ)に在(ア)らんには五条衣を著し、入衆の時には七条衣を著す。若し王宮(オウグウ)聚落(ジュラク)に入るには、須らく大衣を著すべし。

又、外から見えない処に居る時には五条衣を着け、衆僧と共に修行する時には七条衣を着ける。もし王宮や村に入る時には、必ず大衣を着けなさい。

又復(マタ)調和 熅燸(ウンナン)の時には五条衣を著し、寒冷の時には七条衣を加著(カヂャク)し、寒苦 厳切(ゲンセツ)なるには、加へて以て大衣を著す。

又、気候が良くて暖かい時には五条衣を着け、寒い時には七条衣を重ね着し、寒さが厳しくなれば、更に大衣を重ねて着なさい。

故往(コオウ)の一時、正冬(ショウトウ)の夜に入りて、天寒くして竹を裂(サ)く。如来、彼の初夜の分時(ブンジ)に於いて五条衣を著す。夜久しく転(ウタ)た寒きには七条衣を加ふ。夜の後分(ゴブン)に於いて天寒 転た盛んなるには、加ふるに大衣を以てす。

昔ある冬の最中、夜に入ると竹が割れるほど冷えました。釈尊はその夜、初めの頃は五条衣を着ていました。夜も深まり寒さが増してくると七条衣を重ねて着ました。夜明け前になって、寒さがますます厳しくなると、更に大衣を重ねて着ました。

仏 便(スナワ)ち念を作(ナ)さく、未来世の中に寒苦を忍びざるには、諸の善男子、此の三衣を以て足して充身(ジュウシン)することを得べし。

そこで釈尊は思いました。「未来の世に於いて、出家者が寒さに耐えられない時には、この三衣を重ねて着ればよい。」と。

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