供養諸仏(20)

(くようしょぶつ)

時に波斯匿王(ハシノクオウ)、世尊(セソン)の迦葉仏(カショウブツ)の塔を造りたまふを聞きて、即ち勅(チョク)して七百車の塼(セン)を載せ、仏の所(ミモト)に来詣(キタ)りて、頭面(ズメン)に足(ミアシ)を礼(ライ)し、仏に白(マウ)して言(マウ)さく、
「世尊、我 広く此の塔を作らんと欲
(オモ)ふ、為に得んや不(イナ)や。」
仏の言
(ノタマ)はく、「得ん。」

その時に、コーサラ国の波斯匿王は、世尊(釈尊)が迦葉仏の塔を作られたと聞いて、直ちに命じて七百台の車にレンガを載せて 、仏(釈尊)の所にやって来た。そして、地に頭を付けてみ足を礼拝し、仏に申し上げた。
「世尊よ、私は広く各地にこの塔を作ろうと思います。よろしいでしょうか。」
仏は、「よろしい。」と答えた。

仏 大王に告げたまはく、
「過去世の時、迦葉仏、般泥洹
(ハツナイオン)したまひし時、王有り、吉利(キリ)と名づく。七宝の塔を作らんと欲(オモ)ひき。

そして仏は大王に教えて言われた。
「過去の世の時代に、迦葉仏が入滅された時、吉利(キリ)という名の王が供養のために七宝の塔を作ろうと思い立った。

時に臣(シン)有りて王に白(マウ)さく、
「未来世に当
(マサ)に非法の人有りて出づべし。当に此(コ)の塔を破(ハ)して重罪を得べし。唯(タダ)願はくは大王、当に塼(セン)を以て作り、金銀(コンゴン)もて上を覆(オオ)ふべし。若(モ)し金銀を取る者あらんも、塔は故(モト)のごとくに在りて全(マッタ)きことを得ん。」

その時に臣下が王に申しあげた。
「未来の世には、きっと法に背く者が出ることでしょう。そして、きっとこの塔を壊して重罪を受けることでしょう。ですから、どうか大王様、塔をレンガで作り、金銀で上を覆ってください。そうすれば、もし金銀を取る者がいても、塔は元の姿を全うすることが出来るでしょう。」

王 即ち臣の言(ゲン)の如(ゴト)く、塼を以て作り、金薄(コンパク)もて上を覆ひき。高さ一由延(イチユエン)、面の広さ半由延(ハンユエン)なり。銅もて欄楯(ランジュン)を作り、七年七月七日を経て乃ち成る。作成(ナ)し已(ヲハ)りて、香華(コウゲ)もて仏 及び比丘僧(ビクソウ)に供養す。

王は、そこで臣下の言う通りに塔をレンガで作り、金箔でその上を覆ったのである。その高さは一由延で、面の広さは半由延であった。銅で欄干が作られ、七年七ヶ月と七日を経て完成した。王は塔が完成すると、香と花で仏と僧たちを供養したのである。」と。

波斯匿王 仏に白して言(マウ)さく、
「彼
(カ)の王は、福徳にして多く珍宝有り、我今 当に作るべきも、彼の王に及ばざらん。」
即便
(スナハ)ち作(ナ)すこと七月七日を経て乃ち成る。成り已りて、仏及び比丘僧を供養せり。

それを聞いて、波斯匿王は仏に申し上げた。
「彼の吉利王は、福徳円満で多くの珍しき財宝を所有しておられます。ですから、私が今 塔を作っても、彼の王には及ばないことでしょう。」
そして、直ちに七ヶ月と七日を経て塔は完成した。完成すると王は仏と僧たちを供養した。

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