出家功徳(10)

出家功徳(10)

しかあれば すなはち、世人もし子孫をあはれむことあらば、いそぎ出家せしむべし。父母をあはれむことあらば、出家をすすむべし。

ですから世の人が、もし子孫をいとおしむのなら、急いで出家させなさい。父母をいとおしむのなら、出家を勧めなさい。

かるがゆゑに、偈(ゲ)にいはく。「若し過去世無くんば、応に過去仏無かるべし、若し過去仏無くんば、出家受具無からん。」

それゆえに、仏法の詩句は次のように説いています。「もし過去の世が無ければ過去の仏は無かったであろう。もし過去の仏が無ければ 出家受戒も無かったであろう。」と。

この偈は、諸仏如来の偈なり。外道(ゲドウ)の過去世なしといふを破するなり。しかあればしるべし、出家受具は過去諸仏の法なり。われらさいはひに諸仏の妙法なる出家受戒するときにあひながら、むなしく出家受戒せざらん、なにのさはりによるとしりがたし。

この詩句は 諸仏如来の詩句であり、外道の説く過去の世は無いという考えを破るものです。このことから知りなさい、出家受戒は過去の諸仏が伝えた法なのです。我々が、幸いにも諸仏の優れた法である出家受戒をする機会に会いながら、空しく出家受戒しなければ、それは何の障りによるものか知り難いところです。

最下品(サイゲボン)の依身(エシン)をもて、最上品(サイジョウボン)の功徳を成就せん、閻浮提(エンブダイ)および三界のなかには、最上品の功徳なるべし。この閻浮の人身いまだ滅せざらんとき、かならず出家受戒すべし。

最下等のこの身によって、最上等の出家受戒の功徳を成就することは、人間の住む世界、この世の中では最上等の功徳なのです。ですから、この世の人身がまだ滅しないうちに、必ず出家受戒しなさい。

古聖(コショウ)(イハ)く、「出家の人は、禁戒を破ると雖も、猶在俗にして戒を受持せる者に勝れり。故に経に偏(ヒトエ)に説かく、人を勧めて出家せしむる、其の恩報じ難し。

昔の聖者の言葉に、「出家の人は、たとえ禁戒を破っても、まだ在家で戒を保つ者よりは勝れている。故に経はもっぱら説いている、人に勧めて出家させれば、その恩は報い難いと。

復次に出家を勧むる者は、即ち是れ人に尊重業(ソンジュウゴウ)を修することを勧む。所得の果報は、閻魔王(エンマオウ)、輪王、帝釈(タイシャク)にも勝れたり。

また、出家を勧める者は、人に尊重すべき善行を勧めているのである。その者の果報は、罪を裁く閻魔王や世界を治める輪王、三十三天にあって地上を支配する帝釈天よりも勝れている。

故に経に偏に説かく、人を勧めて出家せしむる、其の恩報じかたし。人に近事戒(コンジカイ)等を受持(ジュジ)せよと勧むるは、是の如きの事無し。故に経に証せず。」

故に経はもっぱら説いている、人に勧めて出家させれば、その恩は報い難いと。人に在家の戒などを保つことを勧めても、そのような事は無いのである。故に経には在家の戒などが優れていることを証明していない。」と。

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