出家功徳(15)

仏の言(ノタマ)はく、「若し菩薩摩訶薩、是の思惟を作(ナ)さん、我 何(イズ)れの時に於いてか、当(マサ)に国位を捨てて、出家するの日、即ち無上正等菩提を成じ、還(マ)た是の日に於いて妙法輪を転じて、即ち無量無数の有情(ウジョウ)をして遠塵離垢(オンジンリク)し、浄法眼(ジョウホウゲン)を生ぜしめ、、

釈尊の言うことには、「もし菩薩がこのように考えたとする。私がいつか国王の位を捨てて出家した日には、すぐに無上の悟りを成就し、その日に優れた法を説いて無数の人々を煩悩から離れさせ、物事の真実を見る眼を得させよう。

(マタ)無量無数の有情をして永く諸漏(ショロ)を尽くし、心慧解脱せしめ、亦 無量無数の有情をして、皆 無上正等菩提に於いて、不退転を得せしめん。是の菩薩摩訶薩、斯(コ)の事を成ぜんと欲(オモ)はば、応に般若波羅蜜を学すべし。

また無数の人々の煩悩を永く滅ぼして、心情と智慧の迷いを解脱させよう。また無数の人々が、皆 無上の悟りに安住して退かないようにしようと。菩薩がこれらの事を成就しようと願うのなら、般若波羅蜜(悟りの智慧)を学びなさい。」と。

これすなはち最後身の菩薩として、王宮に降生(ゴウショウ)し、捨国位、成正覚、転法輪、度衆生の功徳を宣説しましますなり。

これは釈尊が、仏になる前の最後の菩薩身としてカピラ城の王宮に生まれ、国王を継ぐ位を捨てて仏の悟りを成就し、法を説いて人々を救うという功徳を説いておられるのです。

悉達(シッタ)太子、車匿(シャノク)が辺より、摩尼雑飾荘厳(マニ ゾウジキ ショウゴン)七宝の把刀(ハトウ)を索取して、自ら右の手を以て彼(カノ)刀を執り、鞘より抜き出して、即ち左の手を以て、紺青の優鉢羅色(ウハツラシキ)の螺髻(ラケイ)の髪を攬捉(トリ)て、右の手に自ら利刀を持って割取し、左の手を以て擎(ササ)げて空中に擲置(テキチ)す。

「シッダールタ太子は、従者のチャンナから宝石で飾った刀を受け取って、自ら青蓮華色をした螺形の髻をつかんで切り取り、空中に投げ捨てた。

時に天帝釈(テンタイシャク)、希有(ケウ)の心を以て大歓喜を生じ、太子の髻(モトドリ)を捧げて、地に堕せしめず。天の妙衣(ミョウエ)を以て承受し接取す。爾(ソ)の時に諸天、彼(カノ)上天(ジョウテン)に勝れたる諸の供具を以て之を供養せり。」

その時に帝釈天は、太子の希有な心を知って大いに喜び、太子の髻が地に落ちないように天の美しい衣で受けた。そして天神たちは、天上のすばらしい供物でこの髪を供養した。」

これ釈迦如来そのかみ太子のとき、夜半に踰城(ユジョウ)し、日たけてやまにいたりて、みづから頭髪を断じまします。ときに浄居天(ジョウゴテン)きたりて、頭髪を剃除したてまつり、袈裟(ケサ)をさづけたてまつれり。これかならず如来出世の瑞相なり、諸仏世尊の常法なり。

これは、釈迦如来がむかし釈迦国の太子であった時に、夜半にカピラ城を脱け出して、日が高くなってから山に入り、自ら頭髪を切り落として出家されたということです。その時には浄居天がやってきて太子の頭髪を剃って差し上げ、仏衣の袈裟をお授け申し上げたといわれます。このように出家は、きまって如来が世に出る時のめでたいしるしであり、諸仏の変わることのない作法なのです。

出家功徳(14)へ戻る

出家功徳(16)へ進む

ホームへ