行持 上(18)

翌日に上堂(ジョウドウ)して、衆(シュ)にしめしていはく、
「楊岐
(ヨウギ)(ハジ)めて住す、屋壁(オクヘキ)(オロソ)かなり。満牀(マンショウ)に尽く雪の珍珠(チンジュ)を撒(チ)らす。項(ウナジ)を縮却(シュクキャク)して暗に嗟嘘(サキョ)す。翻(カエ)って憶(オモ)ふ、古人(コジン)樹下に居せしことを。」

その翌日、守端は法堂に上って修行僧たちに説いた。
「私が楊岐山にはじめて住してみると、屋根も壁も隙間だらけで、床一面に雪の粒が舞い散っていた。その有り様に、首を縮めて人知れずため息をついたものだが、返って昔の仏祖は樹下で修行をされたことを懐かしく思うのである。」と。

つひにゆるさず。しかあれども、四海五湖(シカイ ゴコ)の雲衲(ウンノウ)霞袂(カベイ)、この会(エ)に掛錫(カシャク)するをねがふところとせり。

こうして師は僧堂の修築を遂に許しませんでした。それでも天下の修行僧たちは、この道場に入門することを願いとしたのです。

耽道(タンドウ)の人おほきことをよろこぶべし。この道こころにそむべし。この語みに銘ずべし。

このように、深く仏道に志す人たちの多いことを喜びなさい。そして、この守端和尚の道を心に深く受け止めなさい。この言葉を身に刻み付けなさい。

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