一百八法明門(2)

(いっぴゃくはち ほうみょうもん)

時に護明菩薩(ゴミョウ ボサツ)、已(スデ)に過去に於て宝行(ホウギョウ)を行じ、
(モロモロ)の善根(ゼンゴン)を種(ウ)え、福聚(フクジュ)を成就す。
功徳を具足
(クドク グソク)して、成ぜる所の荘厳(ショウゴン)の師子の高座に昇上(ノボ)りて坐す。

その時 護明菩薩は、もはや過去に尊い行を行じ終えて、
多くの善根を植えて大きな幸福を成就していた。
そして、自ら功徳を具えて実現した美しい荘厳の獅子の高座に上って座った。

護明菩薩は、彼(カ)の師子の高座の上に在(ア)りて、無量の諸宝もて荘厳間錯(カンシャク)し、無量無辺なり。
種々の天衣を而
(シカ)も彼(カ)の座に敷き、種々の妙香を以て彼の座を薫(クン)じ、
無量無辺の宝炉に香を焼き、種々微妙
(ミミョウ)の香華(コウゲ)を出して、其(ソ)の地上に散ず。

護明菩薩は、その獅子の高座の上にあって、計り知れないほどの多くの宝石の荘厳に入り混じり、限りなく美しかった。
菩薩は、様々な天衣をその座に敷いて、様々な妙香でその座を薫じ、
限りない数の宝炉に香を焼き、様々な香しい花を出して、その地上に散らした。

高座の周帀(マワリ)に諸の珍宝あって、百千万億の荘厳は光を放ち、彼の宮(グウ)を顕耀(カガヤ)かす。
彼の宮の上下は宝網羅
(ホウモウラ)覆ひ、彼の羅網(ラモウ)に多く金鈴(コンレイ)を懸(カ)けたり。
(カ)の諸の金鈴は、声を出すこと微妙なり。

高座の周りには、多くの珍しい宝石があり、百千万億の荘厳は光を放って、その天宮は輝いていた。
その宮の上下は珠玉の網飾りに覆われていて、その網飾りには多くの金の鈴が懸かり、それらの金の鈴は美しい音を出していた。

彼の大宝宮は、復(マ)た無量種々の光明(コウミョウ)を出す。
彼の宝宮殿の千万の幡蓋
(バンガイ)は、種々の妙色(ミョウシキ)を映して上を覆ふ。
彼の大宮殿は、諸の流蘇
(リュウソ)を垂れたり。

その大宝宮殿は、また無量の様々な光明を放っていた。
その宝宮殿に懸かる千万の幡蓋(旗を垂らした天蓋)は、様々な美しい色を映してその上を覆っていた。
その大宮殿は、多くの流蘇(五色の房飾り)を垂らしていた。

無量無辺百千万億の諸天玉女は、各(オノオノ)種々の七宝を持して、音声(オンジョウ)もて楽(ガク)を作(ナ)して讃歎し、
菩薩の往昔
(オウシャク)の無量無辺の功徳を説けり。

数限りない百千万億の諸天や天女は、各々様々な七宝を持って、音楽で菩薩を褒め称え、菩薩が昔修めた尊い行の無量の功徳を説いた。

護世の四王 百千万億は、左右に在りて彼の宮を守護し、
千万の帝釈
(タイシャク)は彼の宮を礼拝(ライハイ)し、千万の梵天(ボンテン)は彼の宮を恭敬(クギョウ)す。

世を護る百千万億の四天王は、左右にあってその宮を守護し、
千万の帝釈天はその宮を礼拝し、千万の梵天はその宮を敬い尊んだ。

又諸の菩薩の百千万億 那由他衆(ナユタシュ)は、彼の宮を護持し、
十方の諸仏は、万億 那由他数有りて、彼の宮を護念す。

又、百千万億の菩薩はその宮を護持し、十方の万億の諸仏はその宮を大切に護った。

百千万億 那由他劫(ナユタゴウ)に修行する所の行は、諸波羅蜜(ショハラミツ)の福報を成就し、因縁を具足して日夜に増長す。

菩薩が無量百千万億の時に修めた尊い行は、様々な菩薩行による幸福を成就して、仏となる因縁を日夜に具え増長したのである。

無量の功徳、皆悉く荘厳すること、是(カ)くの如く是くの如く、説き難く説き難し。

この菩薩の無量の功徳が、すべてを荘厳している様は、このように甚だ説き難いのである。

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