出家功徳(27)

禅苑清規(ゼンネンシンギ) 第一に云(イワ)く、
「三世諸仏、皆出家成道と曰
(イ)ふ。西天(サイテン)二十八祖、唐土六祖、仏心印(ブッシンイン)を伝ふる、尽く是 沙門(シャモン)なり。蓋(ケダ)し以て毘尼(ビニ)を厳浄(ゴンジョウ)し、方(マサ)に能(ヨ)く三界に洪範(コウハン)たり。然れば則 参禅問道は、戒律を先と為す。既に過を離れ非を防ぐに非ずば、何を以てか成仏作祖せん。」

禅苑清規 第一に言う。
「三世(過去 現在 未来)の諸仏は、皆 出家して仏道を成就するといわれる。又インド二十八代の祖師や中国六代の祖師など、仏心を証し伝えてこられた方々は、すべて出家である。そもそも出家は戒律を厳守して、まさに世間の立派な模範となるべきものである。その故に、禅に参じ仏道を学ぶには、まず戒律を守ることが大切である。自ら罪過を離れ非法を防ぐことなくして、どうして仏となり祖となることができようか。」と。

たとひ澆風(ギョウフウ)の叢林(ソウリン)なりとも、なほこれ薝蔔(センプク)の林なるべし、凡木凡草のおよぶところにあらず。

たとえ末世の道場であっても、この道場はクチナシの薫る林であって、平凡な草木の生える所ではありません。

また合水(ゴウスイ)の乳のごとし。乳をもちゐんとき、この和水の乳をもちゐるべし、余物(ヨモツ)をもちゐるべからず。

又 修行僧は、水と乳とがよく混ざりあうように和合しなさい。その乳は、水に溶ける新鮮な乳を使うべきであり、古い残り物を使ってはいけません。

しかあればすなはち、三世諸仏、皆曰出家成道の正伝、もともこれ最尊なり。さらに出家せざる三世諸仏おはしまさず。これ仏仏祖祖正伝の正法眼蔵 涅槃妙心 無上菩提なり。

このように、「三世の諸仏は、皆 出家して仏道を成就するといわれる。」という正しい伝統は、最も尊いものです。出家をしない三世の諸仏は決しておられないのです。出家は仏祖の正しく伝えた正法眼蔵(仏法の神髄)であり、涅槃妙心(煩悩を滅ぼした優れた心)であり、無上菩提(最上の悟り)なのです。

正法眼蔵 出家功徳第一 建長七年 乙卯(キニト ウ) 夏安居日(ゲアンゴビ)。延慶三年八月六日、之(コレ)を書写す。

正法眼蔵 出家功徳おわり

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