受戒(3)

いはゆる応受菩薩戒(オウジュ ボサツカイ)、此入法之漸也(シニュウホウシゼンヤ)、これすなはち参学のしるべきところなり。その応受菩薩戒の儀、ひさしく仏祖の堂奥(ドウオウ)に参学するものかならず正伝(ショウデン)す、疎怠(ソタイ)のともがらのうるところにあらず。

いわゆる禅苑清規の「菩薩戒を受けなさい、これは仏法に入る始めである。」という言葉は、仏法を学ぶ者が知っておくべきことです。その菩薩戒を受ける作法は、久しく仏祖の堂奥に学んだ者であれば、必ず正しく相伝しているものです。これは仏法を疎かにする者の得るところではありません。

その儀は、かならず祖師を焼香礼拝(ショウコウ ライハイ)し、応受菩薩戒を求請(グショウ)するなり。すでに聴許せられて、沐浴清浄(モクヨク ショウジョウ)にして、新浄の衣服(エブク)を著し、あるいは衣服を浣洗(カンセン)して、華を散じ、香をたき、礼拝恭敬(ライハイ クギョウ)して、その身に著す。

その作法は、始めに必ず祖師(受戒の師)に香を焚いて礼拝し、菩薩戒を受けたいとお願いするのです。許されたならば入浴して身体を清潔にし、新しい袈裟 又は洗い清めた袈裟に、花を散らして香を焚き、恭しく礼拝して身につけるのです。

あまねく形像(ギョウゾウ)を礼拝し、三宝を礼拝し、尊宿(ソンシュク)を礼拝し、諸障を除去し、身心清浄なることをうべし。その儀、ひさしく仏祖の堂奥に正伝せり。

そして、あらゆる仏像を礼拝し、三宝(仏と法と僧)を礼拝し、長老の僧を礼拝して、様々な障害を除き、身心を清浄にするのです。その作法は、久しく仏祖の堂奥に正しく相伝されて来たものです。

そののち、道場にして和尚 阿闍梨(アジャリ)、まさに受者ををしへて礼拝し、長跪(チョウキ)せしめて合掌し、この語をなさしむ、

その後、道場に於いて戒を授ける和尚(受戒の師)は、戒を受ける者を教えて礼拝 長跪(両膝を地に着けて上体を立てる)させ、合掌してこの語を唱えさせます。

仏に帰依(キエ)す、法に帰依す、僧に帰依す。
仏陀
(ブッダ) 両足尊に帰依す、達磨(ダルマ) 離欲尊に帰依す、僧伽(ソウギャ) 衆中尊(シュチュウソン)に帰依す。
仏に帰依し竟
(オ)わる、法に帰依し竟わる、僧に帰依し竟わる。

仏に帰依いたします、法に帰依いたします、僧に帰依いたします。
人間の中の尊き仏に帰依いたします、欲を離れる尊き法に帰依いたします、人々の中の尊き僧に帰依いたします。
仏に帰依し終りました、法に帰依し終りました、僧に帰依し終りました。

如来 至真(シイシン)無上正等覚(ムジョウ ショウトウガク)は是れ我が大師なり。我れ今 帰依したてまつる。
今より已後
(イゴ)、更に邪魔外道(ジャマ ゲドウ)に帰依せじ。慈愍(ジミン)したもうが故に、慈愍したもうが故に。
(三たび説く。第三には慈愍故
(ジミンコ)を三遍 畳(カサ)ねる。)

まことの無上の悟りを得ている仏は、私の大いなる師です。私は今 帰依いたします。
今後、決して邪魔外道には帰依いたしません。どうか私を慈しみ憐れんで、この誓いをお受けください。
(三回となえる。三回目には慈愍故を三遍となえる。)

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