袈裟功徳(22)

いま袈裟 正伝(ショウデン)は、ひとり祖師正伝これ正嫡(ショウテキ)なり、余師(ヨシ)の肩をひとしくすべきにあらず。相承(ソウショウ)なき師にしたがふて袈裟を受持(ジュジ)する、なほ功徳甚深(クドク ジンジン)なり。

現在、釈尊の袈裟を正しく伝えているのは、祖師が正しく伝えたものだけであり、これが正しい系統の袈裟です。これを他の師の袈裟と同等にするべきではありません。しかし、代々受け継がれた袈裟の無い師に従って袈裟を受けても、その功徳は甚だ大きいものです。

いはんや嫡嫡面授(テキテキ メンジュ)しきたれる正師(ショウシ)に受持せん、まさしき如来の法子法孫ならん、まさに如来の皮肉骨髄(ヒニク コツズイ)を正伝せるなるべし。

まして、代々嫡子から嫡子へと親しく法を伝えてきた正統な師から袈裟を受ければ、その人は正統な釈尊の法の弟子であり、法孫であります。正に釈尊の皮肉骨髄を正しく伝える者と言えます。

おほよそ袈裟は、三世十方の諸仏 正伝しきたれること、いまだ断絶せず。三世十方の諸仏 菩薩 声聞(ショウモン)縁覚(エンガク)、おなじく護持しきたれるところなり。

およそ袈裟は、過去 現在 未来のすべての仏たちが正しく伝えて、絶えることの無いものであり、また過去 現在 未来のすべての仏や菩薩(六波羅蜜を行じて修行する者)声聞(仏の説法を聞いて修行する者)縁覚(縁起の法を観じて修行する者)などが、皆 大切に護持してきたものなのです。

袈裟をつくるには、麤布(ソフ)を本とす。麤布なきがごときは、細布(サイフ)をもちゐる、麤細(ソサイ)の布ともになきには、絹素(ケンソ)をもちゐる。

袈裟を作るには、本来、粗末な麻や綿の布を使用します。粗末な麻や綿の布が無い場合は、きめの細かい麻や綿の布を使用します。どちらも無い場合には、白絹を使用します。

絹布(ケンプ)ともになきがごときは、綾羅(リョウラ)等をもちゐる。如来(ニョライ)の聴許(チョウキョ)なり。絹布綾羅等の類、すべてなきくにには、如来また皮袈裟を聴許しまします。

麻や綿、白絹も無ければ、上等なあや絹やうす絹などを使うことを釈尊は許しています。それらの物がすべて無い地域では、釈尊は皮の袈裟の使用を許しました。

おほよそ袈裟、そめて青黄赤黒紫色(セイ オウ シャク コク シ シキ)ならしむべし。いづれも色のなかの壊色(エシキ)ならしむ。如来はつねに肉色(ニクシキ)の袈裟を御(ギョ)しましませり。これ袈裟色(ケサシキ)なり。

およそ袈裟は、青、黄、赤、黒、紫色に染めて、どの色も壊色(黒ずんだ色)にします。釈尊は常に肉色の袈裟を使用されました。これが袈裟の色です。

初祖 相伝(ソウデン)の仏袈裟は青黒色(セイコクシキ)なり、西天(サイテン)の屈眴布(クツジュンフ)なり。いま曹谿山(ソウケイザン)にあり、西天二十八伝し、震旦(シンタン)五伝せり。いま曹谿古仏(ソウケイ コブツ)の遺弟(ユイテイ)、みな仏衣の故実(コジツ)を伝持(デンジ)せり、余僧のおよばざるところなり。

中国の初祖、菩提達磨が伝えた仏袈裟は、青黒色のインドの屈眴布(木綿の花心を集めて織った布)でした。それは今、曹谿山にあり、インドで二十八代、中国で五代を経て伝来したものです。現在、曹谿の古仏、六祖慧能の法を嗣ぐ弟子たちは、皆 仏袈裟の古来の作法を伝えています。これは他の僧の及ばない所です。

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