供養諸仏(18)

(くようしょぶつ)

僧祇律(ソウギリツ)第三十三に云(イハ)く、塔法(トウホウ)とは、
仏 拘薩羅国
(コウサラコク)に住して遊行(ユギョウ)したまふ。時に婆羅門(バラモン)有りて地を耕(タガヤ)す。世尊(セソン)の行き過ぎたまふを見て、牛杖(ゴジョウ)を持(ジ)し地に拄(ツ)きて仏を礼(ライ)す。世尊 見已(ミオワ)りて、便(スナハ)ち微笑(ミショウ)を発(オ)こしたまふ。

僧祇律の第三十三に塔の法が説かれている。
仏(釈尊)がコーサラ国に留まって遊行されていた時に、一人のバラモンが地を耕していた。そのバラモンは、世尊(釈尊)が通り過ぎるのを見て、牛を操る杖を地に突き立てて仏(釈尊)を礼拝した。世尊(釈尊)はそれを見て微笑まれた。

(モロモロ)の比丘(ビク)仏に白(モウ)さく、「何の因縁の故にか笑ひたまふ、唯(タダ)願はくは聞かんことを欲(ネガ)ふ。」
仏 便ち諸の比丘に告げたまはく、「是
(コ)の婆羅門は、今 二世尊を礼せり。」

比丘(出家僧)たちは仏に申し上げた。「仏は何故お笑いになられたのですか。どうかその訳をお聞かせ下さい。」
仏は比丘たちに答えた。「このバラモンは今、二人の世尊を礼拝したからである。」

諸の比丘 仏に白して言(モウ)さく、「何等(ナンラ)か二仏なる。」
仏 諸の比丘に告げたまはく、「我を礼せし其の杖の下に当りて、迦葉仏
(カショウブツ)の塔有り。」

比丘たちは仏に申し上げた。「二人の仏とは、どなたのことでしょうか。」
仏は比丘たちに答えた。「バラモンは私を礼拝すると共に、その杖の下に迦葉仏の塔があり、それを礼拝したのである。」

諸の比丘 仏に白して言さく、「願はくは迦葉仏の塔を見んことを。」
仏 諸の比丘に告げたまはく、「汝 此
(コ)の婆羅門より、土塊(ドカイ)(ナラ)びに是の地を索(モト)むべし。」

比丘たちは仏に申し上げた。「どうかその迦葉仏の塔を見せてください。」
仏は比丘たちに答えた。「それならお前たちは、このバラモンから土塊とこの土地を求めなさい。」

諸の比丘、即便(スナハ)ち之を索む。時に婆羅門 便ち之(コレ)を与ふ。得已(エオハ)りて、爾(ソ)の時に世尊、即ち迦葉仏の七宝塔の、高さ一由延(ユエン)、面の広さ半由延なるを現出(ゲンシュツ)したまへり。

そこで比丘たちはこれらをバラモンに求めると、その時にバラモンはこれらを比丘に貸し与えた。これらを得ると、そこで世尊は高さ一由延(牛車が一日で行く距離)、表の広さ半由延(牛車が半日で行く距離)の迦葉仏の七宝塔を出現させた。

婆羅門 見已りて、即便ち仏に白して言さく、「世尊、我が姓は迦葉なり、是れ我が迦葉の塔なり。」
爾の時に世尊、即ち彼の家に於て、迦葉仏の塔を作りたまふ。

バラモンはその塔を見上げて仏に申し上げた。「世尊よ、私の姓は迦葉といいます。これは私の迦葉仏の塔です。」
そこで世尊は彼の家に行き、迦葉仏の塔をお作りになった。

諸の比丘 仏に白して言さく、「世尊、我れ泥土を授くることを得んや不(イナ)や。」
仏の言
(ノタマ)はく、「授くることを得ん。」

比丘たちは仏に申し上げた。「世尊よ、私も泥土で塔を作ってもよろしいでしょうか。」
仏は言われた。「よろしい。」

即ち時に偈(ゲ)を説いて言はく、
「真金
(シンゴン)百千を担い、持して用て布施(フセ)を行ぜんよりは、一団泥(イチダンデイ)をもて、敬心(キョウシン)に仏塔を治せんには如(シ)かず。」

仏はその時に詩句を説かれた。「金貨を百枚千枚担いで布施するよりも、一つの泥団子でもって、敬いの心で仏の塔をつくるほうが優れている。」と。

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