供養諸仏(19)

(くようしょぶつ)

(ソ)の時に世尊(セソン)、自ら迦葉仏(カショウブツ)の塔を起(タ)てたまふ。下基(ゲキ)は四方にして欄楯(ランジュン)を周帀(シュウソウ)し、円に二重を起こす。方牙四出(ホウゲ シシュツ)し、上に旛蓋(バンガイ)を施し、長く輪相(リンソウ)を表す。

その時に世尊(釈尊)は、自ら迦葉仏の塔をお作りになった。それは下の基壇が四角形で周りに欄干を巡らし、その上に円形の壇を築いて、四角い突起を四本出し、上には長く垂らした旗と天蓋を設け、長い相輪が立っていた。

仏の言(ノタマ)はく、「作塔の法は応(マサ)に是(カ)くの如くなるべし。」
塔 成り已
(ヲハ)りて、世尊 過去仏を敬いたてまつるが故に、便ち自ら礼を作したまふ。

仏(釈尊)は言われた。「塔を作る方法は、このようにしなさい。」
塔が出来上がると、世尊は過去仏を敬って自ら礼拝された。

(モロモロ)の比丘(ビク) 仏に白(モウ)して言(モウ)さく。「世尊、我 礼(ライ)を作(ナ)すことを得んや不(イナ)や。」
仏の言
(ノタマ)はく、「得ん。」即ち偈(ゲ)を説いて言はく、
「人等
(ニントウ)百千の金(コガネ)、持(ジ)し用いて布施を行ぜんよりは、一善心(イチゼンシン)もて恭敬(クギョウ)して仏塔を礼せんには如(シ)かず。」

比丘たちは仏に申し上げた。「世尊よ、私たちも塔を礼拝してよろしいでしょうか。」
仏は答えた。「よろしい。」 そして詩句を説かれた。
「人々が、百枚千枚の金貨で布施するよりも、一たび善き心を起こして、敬って仏塔を礼拝するほうが優れている。」

爾の時に世人、世尊の塔を作りたまふを聞きて、香華(コウゲ)を持ち来たりて世尊に奉る。世尊、過去仏を恭敬したてまつるが故に、即ち香華を受けて持って塔に供養す。

その時に世の人々は、世尊が塔をお作りになったと聞いて、香や花を持って来て世尊に捧げた。世尊は、過去仏を敬ってその香や花を受け取り、塔を供養された。

諸の比丘、仏に白して言(モウ)さく、「我等 供養することを得んや不や。」
仏の言はく、「得ん。」即ち偈を説いて言はく、
「百千車の真金(シンコン)、持し用いて布施を行ぜんよりは、一善心にして、香華もて塔を供養せんには如かず。」

比丘たちは仏に申し上げた。「我々も塔を供養してよろしいでしょうか。」
仏は答えた。「よろしい。」 そして詩句を説かれた。
「百車千車の黄金で布施するよりも、一たび善き心を起こして、香や花で塔を供養するほうが優れている。」

爾の時に大衆(ダイシュ)雲のごとくに集まる。仏、舎利弗(シャリホツ)に告げたまはく、
「汝 諸人の為に説法すべし。」仏 即ち偈を説いて言
(ノタマ)はく、
「百千の閻浮提
(エンブダイ)、中に満てる真金の施も、一法を施し、随順して修行せしめんには如かず。」

その時に大衆(仏の教えに従う者たち)が雲のように集まってきた。仏は舎利弗に告げた。「お前は人々のために法を説きなさい。」 仏はそこで詩句を説かれた。
「百の国々、千の国々の中に満ちる黄金の施しよりも、一つの法を施して、その教えに従って修行させるほうが優れている。」

爾の時に座中に得道(トクドウ)の者有り、仏 即ち偈を説いて言はく、
「百千世界の中に、中に満てる真金の施も、一法を施し、随順して真諦
(シンタイ)を見んには如かず。」

その時に集まりの中で悟りを得た者があった。そこで仏は詩句を説かれた。
「百の世界、千の世界の中に満ちる黄金の施しよりも、一つの法を施して、その教えに従って真理を見ることのほうが優れている。」

爾の時に婆羅門(バラモン)、信を壊(ヤブ)らず。即ち塔の前に於て、仏及び僧に飯(ハン)す。

それを聞いてバラモンは、信をいよいよ固くして、その塔の前で仏と僧に食事を差し上げて供養した。

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